テニススクールのレッスンで、Tさんに久しぶりに会いました。
Tさんとは、私がまだ日曜のクラスに在籍していた5,6年前に、同じクラスに居た、当時65歳くらいだった人です。
Tさんは私と同じラケットを使っていたので、それをきっかけに仲良くなりました。
Tさんは私より15歳も上なのに、腰が低く、謙虚で、いつも笑顔で私と接してくれました。
テニスもなかなか上手く、60代後半でもキレのある力強い球を打ち込んできます。
そんなTさん、いつの間にか日曜のクラスに現れなくなり、私も平日のクラスに行くようになったため、全くTさんと会わなくなりました。
そして今日、もの凄く久しぶりにお会いしたというわけです。
「(平日の)このクラスに参加されるなんて珍しいですね」と私が聞くと、Tさんの口から驚くべき言葉が出てきました。
「今日はたまたま仕事を休めたんですよ」
なんだって!
「え!まだ働いているんですか!?」
と思わず言ってしまいました。
Tさんは現在71歳のはず。
そしてTさんは、かつて◯◯省に勤めていた元官僚で、その中でもかなり偉い人だったみたいです。
官僚を辞めた後も、色々な会社の会長やら社外取締役やらになって、精力的に働いていたのは知っていました。
「今週、ちょっとヨーロッパに行かないといけないんですよ」なんてことを5,6年前はレッスンの時にボソッと言っているのを聞いたこともあります。
私なんて、来年、56か57歳で仕事を辞めようと思っているというのに…。
まあ、でも仕事が大好きな人もいますからね。
「仕事大好き!超楽しい!」と思っているなら、逆に70代になっても仕事があるってサイコーじゃないですか。
と、一瞬思ったのですが、どうやらTさんもいい加減 仕事を辞めたいらしいのですが、周りが辞めさせてくれないらしいのです。
「会社の合併の話が出てきて、ゴタゴタしているので、それが落ち着くまで辞めたくても辞められないんですよー。あと2、3年は辞められないかも」と。
優秀すぎる人って大変なんですね。
そしてTさんが遠い目をしながら続けて言った言葉がさらに衝撃的でした。
「このままなんの楽しみもなく死んでいくのかな…」
私は、え?!と心の中で叫びました。
人から必要とされて、毎日精力的に働いて、高級住宅街に住んでいて、いい車に乗って、可愛いお孫さんがいて、休みの日は趣味のテニスを楽しみ、人脈も豊富で、顔の肌艶も良く、実年齢より若く見えて健康的で、充実した楽しい日々を送っているんだろうなあ…と思っていたTさんが「何の楽しみもない」とは!
そう言った直後に「テニスの時だけは楽しいですけどね」と付け足したので、少しだけ私もホッとしましたが。
たとえば、Tさんがあと2、3年後に仕事から解放されて、ようやく自由な時間を手にしたとしても、その数年後に(健康的なTさんなら無いと思いますが、でも統計的にはあり得る話で)健康寿命に達してしまい、人生において何からも束縛されずに本当に楽しかったと思える時期が わずかに "数年" だったとしたら切なすぎます。
仕事からの解放=楽しい人生
では必ずしもないかもしれませんが、仕事漬けの人生に楽しみはないような気がする、と少なくとも私とTさんは思っています。(今の私は仕事漬けではありませんが…)
グズグズしないで来年にはスパッとフルリタイアするぞーとあらためて思わせてくれる、Tさんの言葉でありました。