「南国の島人と商社マンの話」ですが、うろ覚えですが、こんな話だったと思います。
常に忙しい一人の日本人商社マンが南の島に仕事でやって来ました。暑い日差しの中、汗をかきながらホテルと仕事場とを往復する毎日です。
彼がせかせかと歩く道の途中にはいつも、ヤシの木の木陰で昼寝をしている島の男が一人います。
商社マンは年が同じくらいのその男を「なんで働かないで毎日ぐーたらしているのだろう」と少し蔑む思いで見ていました。
ある日の帰り道、いつものように木陰で休んでいた男が商社マンに声を掛けます。
「毎日暑いのに大変だね。どうしてそんなに一生懸命に働くんだい?」
商社マンは答えます。
「一生懸命に働いてお金を貯めて、将来南の島でのんびりと暮らすためですよ」
男は驚いたような顔をしてこう言います。
「なんだ。そんなことならすでにおれはやってるよ」
この話は日本人が働きすぎだということを言っているわけですね。また、お金がないと良い人生は送れないという考えは正しいのか、という問いにもなっているんだと思います。
私はこの話を初めて知った時は「たしかにそうだよな。そんなに一生懸命にお金を稼がなくても目指している人生は意外と簡単に手に入るのではないだろうか」と思いました。
それからしばらく何年もそういう考えが私の心の根底にはあったと思います。だからセミリタイアの道もあまり迷うことなく決められたのかもしれません。
でもセミリタイアしてから思ったのですが、この話では南国の男が人生の勝ち組で、日本人商社マンが負け組みたいに思われていますが、本当にそうでしょうか?
商社マンは常に忙しくて休む暇もないのかもしれませんが、世界中を飛び回り、多くの人と出会い、多くの経験をして、たくさんの社会貢献をしているではないですか。仕事を通して自己実現の道を歩んでいます。
つまり、仕事というのは大変なものかもしれないけれど、何にもしない人生よりも充実させるものだと考えることができるわけです。
商社マンの方が良い生き方だと思ってしまうのは、隣の芝が青く見えているだけではないと信じたいです。